小笠原村監査委員が決算審査で意見書

 補助対象事業の明確化など20件を指摘

 

 小笠原村監査委員(三橋浩・菊池聰彦)は六日に開かれた議会定例会決算特別委員会で、平成八年度の村会計(歳入歳出)の審査結果の中で補助対象事業の明確化、村税収入の低下、補助交付団体への補助金の使途など20件を指摘し意見書を提出した。審査の対象となったのは、平成八年度小笠原村一般会計歳入歳出決算など七項目。

 意見書は、提出された決算書、明細書および調書は法令に準拠しており、改善はされているとしているものの、補助金交付団体の指導のなかで指摘した事項の中には、「小笠原文化サークルネットワーク」の、補助金の目的や執行内容の実態が不明確な部分があるとし、補助体系、規約、組織内容などを明確にするなど合理化が必要としている。   この他、補助の再検討について航空路開設に係る補助を「小笠原空港建設期成同盟」に一本化したため、「明日の小笠原を創る会」への助成が不明確になっている事から補助の再検討をすべきなどが含まれていた。

 ◎勉強はしていないので低下の実態は把握していない」―村長

 十二月六日開かれた決算特別委員会において、小笠原村監査委員(三橋浩・菊池聰彦)から、平成八年度の小笠原村会計歳入歳出の決算審査結果の報告が行われた。この後、同日午後より決算特別委員会が開かれ審議された。その結果、改善内容への一層の努力を課した上で、平成八年度決算は承認された。その中で、監査意見書並びに委員会審議では特に村税徴収率、補助金執行、工事契約、生活再建資金の利子の扱いなど、改善の必要があると指摘された。

●「天皇・皇后両陛下行幸啓記念碑建立実行委員会」の総会の議決が済んでおらず、補助金確定の手続きも未済のままではなはだ遺憾だとし、早急な改善を求めた。 

●昨年の指摘により、航空路の開設に係る補助を「小笠原空港建設期成同盟」に一本化したため、「明日の小笠原を創る会」への補助目的が不明確であるとし、「補助目的の在り方が非常に問題になるので早急に解決すべき」と、厳しく指摘した。

●「サマーフィステバル実行委員会」の実態、運営、規約が不明確なので、実施団体を観光協会にするなど、今後の検討を求めた。

●「小笠原文化サークルネットワーク」の目的、執行内容、受け皿、実態、規約等が不明のため、指導の必要性を指摘。

●「小笠原村農産物出荷価格保証事業協会」の事業が六年間行なわれず、昨年の定期監査において制度の必要性の有無を含めた検討を指摘したが、結論が出ていないとし、早期検討を求めた。

●工事契約手続きの問題について、五〇〇万円以上の工事契約三十九件について審査した結果、概ね適性としながらも、例外的な契約方法しての特命随意契約十一件のうちで、特命理由が不明確なものがある。制限条件に当てはまるもので、厳格な手続きのもとに執行することを指摘した。また、一千五〇〇万円以上の小売りについて指名競争入札または随意契約を行う場合、指名業者選定委員会にかけて行う規定があるが、今回協議内容を示す書類の添付が無かった。規定に基づき、監査を受ける必要があると指摘した。

●菊池聰彦監査委員は補足として、村税等の徴収率アップのため、窓口業務の時間変更を要望。また、村も住民サービス・住民情報公開を目指すためにも、監査委員の増員を図ってほしいと述べた。

●簡易水道事業について監査委員より、一般会計からの繰入金での維持は再検討をと、指摘があった。  

 本来、水道事業は公営事業法で独立採算を旨とするが、実態は一般会計からの多額の繰入金で維持されており、かんばしくない。独自の会計で維持することを目指し、島民の負担と、村財政の限界とを考慮した上での再検討を求めた。 

 午前中に行われた監査委員会の意見書の中で、村民税・国民健康保険税・保育料・生活再建資金返済金等の徴収率の低下傾向が続いている。訪問徴収や、郵便局・農協など納入場所の多様化、口座振替のためのOA化の検討など、徴収率向上の具体策の必要性を指摘されたことに対し、審議の中でも櫛田真昭委員から「例年同じ指摘を受けている。徴収率低下を防ぐ手立てを村長はどう考えるのか」と、質された宮沢昭一村長は、「踏み込んだ勉強はしていない」と答えた。

 これに対し同委員の「答弁になっていない」との声に、「方法を検討し前向きに取り組む」と言い直し、訂正する場面があった。

 また、同委員から「徴収率低下の原因を村長として把握しているか」と質問され、宮沢村長は「申し訳ないが把握していない」と答弁。村長に代わって松山総務課長から「七年度は個別訪問徴収をしたが、八年度は別の作業が入り、手が回らなかったのが低下の原因」との説明があった。


 

【医師の委託料・年間99.000.000万円】                                                           池田望委員は、年間九千九〇〇万円の医師の委託料に関し、「できるだけ多くの医師を確保し、速やかに診療を受けられることが望まれているが、今の医師の(人数に対する)委託料は適性か」とただしたのに対して、宮沢村長は「委託料うんぬんより、医師の確保が優先。今の委託料が適性かどうか、意見は持っていない」と答えた。斉藤村民課長は「当村は他と比べて高めかなと思う。それは都の衛生局からも指摘されている。当初は無医村では困るといういきさつもあったが、今後は医師の人員整備(増員)から、委託料の軽減化を図っていく」と述べた。 

 佐々木幸美氏は、特産品開発普及センター(ラム・リキュール)の経営がスタートからこの十年間赤字続きであり、建物賃貸の商工使用料も村に支払われていないことから、八年度の赤字の実態と、同社長である宮沢村長に、今後の経営への姿勢を尋ねた。

 箭内産業観光課長から、八年度の赤字は約一千二八七万円であることが説明されたあと、宮沢村長は、「実態把握の上継続するかやめるか、今年度中には結論を出したい」と述べた。これに対し佐々木議長は、「これだけ補助金(初期設備費だけで約三億五千万円)をつぎ込んでいる。

 〈このほか、これまで同社には補助金が一億三千五百万円も投入されている)このままでやめられるのか」と質した。宮沢村長は「十年間、良い結果が出ていない。できれば存続の方向で行きたいが、幾つかの選択肢の中にやめる方向もあるということだ」と答弁。佐々木氏の質問に対する今後の具体的な経営姿勢については示されなかった。

 森下一男委員は、昭和五十八年の台風十七号の被害に対する激甚災害指定の貸付金・生活再建資金返済に係る質問の中で、「村は都より無利子で元金を借りていながら、村民からは有利子(三%)で返済させているのには矛盾がある。その利子はどこに充てているのか」と質問。武藤企画財政課長は「滞納者の分が足りなくなるので、利子を元金返済に充てている」と回答。

 同委員は、さらに「返済が進まない原因が利子にもあるとしたら、再検討すべきだ」と述べたのに対し、宮沢村長は「前向きに取り組む」と回答した。

 櫛田委員は「都の無利子の制度融資を受けながら、地方自治体が金利を稼ぐことをやって良いのか悪いのか、いずれかに明記されていないか」と質問した。

 武藤課長は、「無担保の者には有利子で貸し、三%の利率を超える他の融資を併用する場合は、生活再建資金の方を無利子とすると、都の指導にある」として、違法ではないことを説明した。

 これに関連して、箭内産業観光課長は「当時財政担当であったが、将来、災害対策基金を創っていくにあたり、その原資にこの利子も充てるという申し合わせがあった」と、経緯を述べた。さらに武藤課長は、「返済期限の五年後、完済されたとして、元金返済に充てていた利子と基金の取り崩し分は、災害対策基金に積んでいく」と、当局の考えを改めて明らかにした。

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