小笠原村は 、十二月、「小笠原諸島観光振興計画」策定調査案をまとめ、小笠原観光協会、商工会など島内各団体で構成する「検討会」に示した。策定案では、亜熱帯の島 小笠原諸島は32の島からなる恵まれた自然の宝庫として知られている。こうした属島の保全と利用を図りながら、観光振興にどう利用しようかという、「島しょ利用計画・属島利用計画プラン」の策定を進めている。さらに同案で、エコツアーの一環として、「アイランドテラピー構想」のなかで海洋医学として注目されている海洋性気候や海水、温泉など自然の治癒力を利用して心身をリフレッシュする「タラソテラピー」にも目が向けられて「属島利用」の計画の中に盛り込まれている。
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97年には、「新しい離島振興方策・アイランドテラピー構想の具体化を目指して」と題するシンポジウム(国土庁、日本離島センター主催)過疎と高齢化に悩む離島を新しい健康保養地として活用しようという、国際シンポジウムが東京で開かれた。
シンポでは、「タラソテラピー」の先進国であるドイツやフランスの専門家をはじめ、全国の離島にある地方自治体から多くの町村長が参加していた。
地方財政が大幅な赤字をかかえる昨今、国の行革政策で離島の補助策も見直される時期が来ることが予想される。そうした危機感から生まれたのが「アイランドテラピー構想」であった。「アイランドテラピー」とは、ヨーロッパで古くから行われている、美しい自然の海岸が持つ快適な環境で心身を癒す治療 法(タラソテラピー)を島(アイランド)を利用して行おうという試み。
ヨーロッパではすでに、地域の自然や風土を生かし、都会人を対象に温泉、海洋を利用した保養・療養施設が地方の活性化に貢献している。衰退する一方の漁業や安い海外旅行に太刀打ち出来ない観光やリゾート開発にかわる「島おこし」としてみな興味を示している。
「アイランドテラピー構想」は、まだ小笠原村が新しい観光振興策になるかどうかを調査している段階だが、一次産業が衰退する中、従来型の公共事業に寄りかかっていては離島の明日は暗い。固有の閉鎖性を打ち破り、高度化する社会に心身とも疲れている現代の都会人に「癒しの場」を提供して共存する意識改革を島の人たちに果たして期待出来るのか、試金石となるようだ。